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働き方改革

建設業が働き方改革を進めるには?2024年に備えてすべきこと

建設業における働き方改革を推進するのは難しいとされています。しかし、2024年4月には、改正された労働基準法が施行されます。改正法では、残業について、罰則付きの上限規制が設けられています。

そもそも建設業における労働基準法の施行に5年間の猶予が設けられたのは、残業規制の遵守が難しいと判断されたためです。設備施工会社も建設業の一員であり、状況はほぼ同じと言っていいでしょう。

そこでこの記事では、働き方改革の概要を解説するとともに、建設業は改正法の遵守が難しい理由を元に建設業が2024年に向けてすべきことをわかりやすく紹介します。

働き方改革が必要な理由

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、介護や育児との両立など、日本は今、多くの課題に直面しています。こうした課題に対応するためには、生産性向上や就業機会の拡大、個人の意欲や能力を発揮できる環境づくりが必要です。

働き方改革ですべきことは、長時間労働をしなければならない環境を是正し、多様で柔軟な働き方を実現することです。そして、雇用形態に関係なく公正な待遇を確保するなどの措置を講じる必要があります。従業員が働きやすい環境を整えることが、企業にとっての働き方改革だと言っても過言ではないでしょう。

働き方改革を通じて魅力ある職場づくりが実現すれば、人材の確保につながり、その結果、企業の業績の向上や利益の増加といった好循環を生み出す可能性があります。

働き方改革とは

働き方改革とは、労働者が置かれた個々の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指すことです。

労働者は、子育てや介護、家族のサポートなど、それぞれにさまざまな事情を抱えています。こうした事情に応じて多様な働き方から自分に合ったものを選択できる社会を実現するために、働き方改革を行います。

建設業における働き方改革の内容

建設業界における働き方改革として真っ先に取り組むべき内容は、長時間労働の是正です。

建設業は、慢性的な人手不足や短納期であるという事情があります。さらに、業界の旧態依然とした体質によって長時間労働に抵抗がないことが、長時間労働を常態化している要因だと考えられ、長時間労働の常態化は業界全体の課題であると言えます。

建設業における長時間労働の是正には時間がかかるため、改正された労働基準法の施行までに猶予期間を長く取っていると考えられます。

建設業の働き方改革の押さえるべきポイント

建設業が働き方改革を進めるには、次の3つのポイントを押さえることが重要です。

  1. 長時間労働の是正
  2. 給与・社会保険の見直し
  3. 生産性向上

この3つに取り組むことで、働き方改革で注目されている8つの施策をクリアできる可能性が高まります。

働き方改革で注目される8つの施策

働き方改革では、特に次の8つの施策が注目されています。

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 勤務時間インターバル制度の導入
  3. 年5日以上の有給休暇取得義務
  4. 月60時間以上の時間外労働に割増賃金率の引き上げ
  5. 同一労働・同一賃金の原則
  6. フレックスタイム制の柔軟性拡大
  7. 高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働)の創設
  8. 産業医・産業保健機能と長時間労働者に対する面接指導等時間の強化

この中で罰則が設けられているのが「時間外労働の上限規制」です。この項目では、時間外労働の上限規制と36協定について、解説します。

時間外労働の上限規制は刑事罰の対象

働き方改革には法的な規定があり、「時間外労働の上限規制」に違反した場合、刑事罰の対象になります。違反すると、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則があることに注意が必要です。

改正された労働基準法では、従業員の長時間労働を防ぐため、時間外労働は原則月45時間かつ年360時間以内と規制しています。さらに、従業員が残業するには36協定の締結が必要です。36協定を締結し、特別な事情により労使が合意する場合でも、残業時間は月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設定されており、これを超えると刑事罰の対象となります。

36協定とは

法定労働時間を超えて労働者を働かせる必要がある場合、労働基準法第36条に基づき、労使間で時間外労働や休日労働について締結する時間外労働協定のことを指します。

36協定は労働基準監督署に届け出る必要があります。また、36協定は会社単位ではなく、事業所単位で締結しなければならない点に注意しましょう。

「建設業の2024年問題」とは

引用元:建設業の働き方として目指していくべき方向性(参考資料)

建設業界では2024年4月から、36協定の特別条項における残業の上限規制が適用されます。2019年4月の労働基準法の法改正に伴い、違反した企業に罰則が科されることになりましたが、中小企業は2020年4月から、建設業と運送業は2024年4月からと、法律の施行に猶予期間が与えられました。

建設業界の猶予期間が長い理由の1つとして、「長時間労働の常態化」が挙げられます。

建設業界の長時間労働の常態化

国土交通省の調査によると、建設業界の2016年度の実労働時間は年間2056時間、年間出勤数は251日でした。同じ2016年度の製造業の実労働時間は1951時間、年間出勤数は234日。調査産業の合計では実労働時間1720時間、年間出勤数222日でした。比較すると、建設業界の実労働時間年間出勤数は、群を抜いて多いことがわかります。

長時間労働の常態化は、建設業界全体の課題です。改善に時間がかかると予測し、5年もの猶予期間を取っていると考えられます。

とはいえ、猶予期間は2024年3月末までで、待ったなしです。2024年4月からは労働時間の上限規制を遵守しなければなりません。施行までにまだ時間があると楽観視せず、できるだけ早い段階から働き方改革を遂行し、時間外労働の上限規制を含めた8つの施策について取り組んでいくべきです。

その解決の糸口として、国土交通省がガイドラインを作成しています。ガイドラインについては、後述します。

人材不足

建設業界は慢性的な人材不足が続いています。国土交通省「建設産業の現状と課題」では、2025年には47万〜93万人の建設人材が不足すると予測しています。人材不足になる理由は主に3つあります。

  1. 建設業界への入職者の減少
  2. 高齢者の大量離職
  3. 少子高齢化

それぞれについて解説します。

建設業界への入職者の減少

建設業界への入職者は、1997(平成9)年をピークに減少傾向にあります。建設業界のイメージとして、残業が多い、休みが少ない、社会保険に加入できない会社がある、IT化の遅れなどのほか、キツい・汚い・危険という3Kの印象があるのがその理由とされています。

少子高齢化が進む現代では、建設業界を希望する若年層が少なく、人材を採用しにくいという現実があります。また、建設業界における女性の技術者や技能者が少ないのも人材不足の一因とされています。

高齢者の大量離職

引用元:国土交通省「建設産業の現状と課題」

少子高齢化による生産年齢人口の減少に加え、高齢者の大量離脱も人材不足の一因です。国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」によると、現在建設業に従事している65歳以上の高齢者は42.4万人いるとされ、10年後には大半が引退することが予測できます。

少子高齢化

引用元:国土交通省「建設産業の現状と課題」

建設業に従事する人材の約3割が55歳以上、29歳以下は約1割と、少子高齢化が進んでいます。2014(平成26)年と比較し、2015(平成27)年は55歳以上が4万人減少しているが、29歳以下の従事者は横ばいで同程度です。建設業界にとって、若い入職者の確保と、ベテランが持つ熟練の技術を次世代へ継承することが大きな課題です。

人材不足解消のための取り組みが働き方改革の促進につながる

求職者が「魅力的な会社で働きたい」と考えるのはごく当たり前のことです。では一体、魅力的な会社とはどのような会社なのでしょうか。

求職者が働きたい、魅力的に映る会社像は、残業が少ない、休日が多くてしっかり休める、好待遇、スキルに見合った給与の支給がある会社だと言えるでしょう。

自社を魅力的な会社にするには、自社の制度を見直すところから始めます。その上で、働き方改革を推進し、長時間労働の是正、社会保障と技能や経験にふさわしい処遇、生産性向上を実現できれば、新たな人材の雇用と、従業員の定着率の向上が見込めます。

また、建設業界は今後、さらなる人材不足が懸念されています。高い技術を持つ高齢の技術者の大量離脱により、人材の確保のみならず、技術の継承も大きな課題です。これらの課題をいち早く解決するためにも、率先して、働き方改革を進めていきましょう。

2024年4月に向けて建設業者がすべきこと

2024年4月に向けて働き方改革を促進するために、国土交通省が「建設業働き方改革加速化プログラム」という、通称・国交省ガイドラインを作成し、建設業に求める具体的な取り組みを示しています。建設業者が取り組むべきことは主に次の3点です。

・長時間労働の是正
・給与・社会保険の見直し
・生産性向上

それぞれについて解説します。

長時間労働の是正

労使で36協定を締結したうえで、長時間労働を是正し、時間外労働の上限規制を遵守することが求められます。これまで、建設業における時間外労働は上限規制の適用除外となっていたため、残業には制限がありませんでした。これは、建設業は受注する仕事に波があるうえ、天候に左右されるなどの事情を配慮してのことでした。

ところが、2024年4月からは一変して、残業時間に上限規制がかかります。

【これまで】

・残業時間の上限規制は建設業には適用除外
・労働時間の大原則:1日8時間/1週間40時間
・36(さぶろく)協定を結ばないと時間外労働はできない

【2024年4月以降】

・原則月45時間以内かつ年360時間以内
・特別な事情がある場合の「特別条項」でも上限規制を設ける

 ①年720時間(月平均60時間)

 ②年720時間の範囲内で、
  a.2〜6ヶ月の平均でいずれも80時間以内(休日出勤を含む)
  b.単月100時間未満(休日出勤を含む)
  c.原則(月45時間)を上回る月は年6回を上限

時間外労働の上限規制は「特別条項」が少しややこしく感じられますが、上記のルールを「全て」クリアしなければなりません。また、「違反をしても罰金を払えばいい」などと、安易に考えてはいけません。違法行為を行った会社として、公共工事の受注などにも影響する可能性があるからです。

時間外労働時間の削減に成功した事例

残業や休日の作業ができない環境づくりによって時間外労働時間の削減に成功した事例を紹介します。

愛知県にある建設会社では、所定外労働時間削減と年次有給休暇取得促進について、取り組みました。職場環境の整備や労働条件の改善を図ることによって、ゆとりと豊かさを感じられるワーク・ライフ・バランスの実現を目指しました。

毎週水曜日にノー残業推進日を設け、会社はもちろん、職員組合からも社員に声をかけ、ノー残業デーを推進しています。また、所定休日の土曜のうち第2土曜日は作業所を閉所し、労働時間の短縮を図りました。作業の都合で第2土曜日の閉所が難しい場合には他の土曜日に閉所しています。

また、年次有給休暇の充実を図るため、入社した最初の年から20日間の有給休暇を付与しています。ゴールデンウイークや夏季、年末年始などの長期休暇の時季に計画的に有給休暇を付与し、長期の連続休暇の取得を実現しています。また、従業員が抱える事情に対応するため、元来2年で時効消滅する年次有給休暇を、介護や傷病の目的で利用できるよう、積み立てできるような制度を整備しました。

このほか、1つの現場が終了した後に3日間の連続休暇の取得や、永続勤務者へのリフレッシュ休暇の取得など、休暇制度も拡充した結果、1ヶ月あたりの時間外平均労働時間数がおよそ1時間、減少することができました。

参照:愛知労働局|「働き方改革」取組事例 名工建設株式会社

給与・社会保険の見直し

給与や社会保険の見直しとして、ガイドラインでは、技能や経験にふさわしい処遇・待遇の実現と、社会保険への加入を示しています。

技能や経験にふさわしい処遇・待遇の実現に向けた取り組みをして、ガイドラインでは大きく3つを挙げています。

1つ目は、発注関係団体・建設業団体に対し、労務単価の活用や適切な賃金水準の確保を要請することです。2つ目は、建設キャリアアップシステムの稼働と、概ね5年ですべての建設技能者(約330万人)の加入を推進することです。3つ目は、技能・経験にふさわしい処遇(給与)が実現するよう、建設技能者の能力評価制度を策定することです。

また、社会保険への加入をミニマムスタンダードにすることも重要です。ガイドラインでは、全ての発注者に対して、工事施工を依頼する下請の建設会社を社会保険加入業者に限定するよう要請しています。また、社会保険に未加入の建設企業は建設業の許可・更新を認めない仕組みの構築にも言及しています。

こうした取り組みは、建設会社単体で取り組んだり、声を上げたりするのは難しいことです。改善に向け、業界や団体、行政が一体となって取り組むことが重要だと言えます。

生産性向上

労働時間の削減には、業務の効率化による生産性の向上が必須です。国土交通省は、生産性向上に取り組む建設企業を後押ししており、中小の建設企業による積極的なICT活用を促すため、公共工事の積算基準等の改善に向けた取り組みを示しています。

また、建設業許可等の手続き負担を軽減するため、申請手続きの電子化や、施工品質向上のためIoTや新技術の導入も推進しています。さらに、限られた人材・資機材の効率的な活用を促進するため、技術者配置要件の合理化の検討や、施工時期の平準化を進めるよう、ガイドラインに記載しています。

魅力的な会社づくりを進め人材確保に努めよう

2024年4月に向けて建設業者がまずすべきことは、魅力的な会社作りに取り組むことです。労働環境を整え、残業が少なく、休日を確保してしっかり休める体制を作れれば、求職者に選ばれやすいうえ入社後の定着率が高まり、人材不足解消につながります。

とはいえ、当面の間は、今いる人員で残業や休日出勤をせずに業務を円滑に進めなければなりません。そのためには、業務効率化が必須です。

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