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働き方改革

建設業における離職率が高い原因と人材が定着するのに必要な要素

改修工事 施工図 3D

若い人材を採用しても定着せず、離職率が高いことに悩んでいる建設業の事業者や責任者は多いでしょう。高齢化が進む建設業において、次世代の担い手を採用し、技術を承継していくことが喫緊の課題です。

そのためには人材の定着化を目指し離職率を下げなければなりません。離職率を下げるには、まず原因を把握する必要があります。

そこでこの記事では、建設業の離職率がどのくらいであるかと離職率が高い原因について解説します。また、採用した人材が定着するために必要なヒントやアイデアも紹介するので、参考にしてください。

建設業の離職率はどのくらい?

建設業は高齢化が進み、若年層の入職促進と定着化が課題となっています。そこで、高校新卒者の入職状況と離職率について確認してみましょう。

建設経済研究所の調査によると、2020年(令和2年)の高校新卒者の就職先のシェア率において、建設業は12.1%と過去60年の中でも高い水準となっています。製造業が40%超と圧倒的であるものの、全産業におけるシェア率としても低いわけではありません。

引用元:建設通信新聞

しかし、厚生労働省の資料によると建設業の高卒者の離職率は大幅に高いことがわかります。2019年(平成31年)時点で建設業における高卒者の就職後3年以内の離職率は42.2%となっており、約5人に2人は離職していることになります。

全産業の平均35.9%と比較しても高い水準です。このまま進むと建設業の将来の担い手を確保できず、建設業界に支障が生じます。

「新規高卒就職者の産業分類別就職後3年以内の離職率の推移」

※令和2年3月卒については就職後2年以内、令和3年3月卒については就職後1年以内の離職率

引用元:新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況 高校

引用元:厚生労働省 学歴別就職後3年以内離職率の推移

 

2021(令和3)年のデータをもとに算出された、高卒者を含めた29歳以下の技能者数は、約12%にとどまっています。技能労働者の25%以上が60歳以上で、今後引退していく世代です。これからの建設業を支える若年層の離職率を下げ、人材を定着させる対策が早急に求められます。

参考:国土交通省 最近の建設業を巡る状況について

建設業の離職率が高い原因とは?

建設業における若手労働者の状況について、厚生労働省の「建設労働者を取り巻く状況について」によると、「企業が考える若手技能労働者が定着しない理由/建設業離職者(離職時若年層)が仕事を辞めた理由」として、以下などが上位となっています。

  • 休みがとりづらい(企業:23.5%/離職者:8.4%)
  • 作業がきつい(企業:43.7%/離職者:5.1%)
  • 遠方の作業場が多い(企業:11.6%/離職者:9.0%)
  • 現場での人間関係が難しい(企業:24.9%/離職者:5.6%)
  • 労働に対して賃金が低い(企業:24.2%/離職者:7.9%)
  • 雇用が不安定である(企業:8.2%/離職者:9.6%)

※上記の企業側の数値は複数回答の結果である

参考:厚生労働省 建設労働者を取り巻く状況について

以下で、それぞれについて確認していきます。

休みがとりづらい

建設業界は慢性的な人手不足の状態です。人手不足によって一人当たりの仕事量が増え、長時間労働や休みが少ない現状となっています。

また、建設工事は天候や資材の納期遅延などの影響で、スケジュール通り工事が進まないことも少なくありません。しかし工期が延長されることはほとんどなく、スケジュールがタイトになります。結果的に休日出勤を余儀なくされることも多くあります。特に、設備工事など後工程を担う部門にしわ寄せが及びます。

建設業では出勤日数で収入が変動する日給制を採用する企業が多くあります。休むとその分収入が減ってしまうことから、休日を返上して働く文化が根付いています。しかし、新入社員にとっては仕事量が多すぎて、疲弊してしまう可能性があります。

作業がきつい

建設業は肉体労働です。長時間労働の現場も多く体力的につらいことも多いでしょう。また、埃や汗にまみれながら高所や足場の悪い場所での作業でリスクを伴うことから「きつい・汚い・危険」の3Kのイメージを持たれる職場です。

しかし、この3Kのイメージを払拭すべく、国土交通省は新3Kを掲げて取り組みを進めています。新3Kとは「給与・休暇・希望」を表します。新3Kを掲げたモデル工事も進められており、今後、労働環境が改善されていくことが期待できます。

遠方の作業場が多い

建設業では、基本的に現場単位で働くため、現場が決まれば工事が完了するまで常駐することになります。しかし、他の現場へ応援に駆けつけなければならないこともあります。補修工事のため、完了した現場へ再度足を運ぶケースも発生します。

遠方の場合でも工事のスタート時間が変わることはありません。移動時間と労働時間を含めた拘束時間が長くなり、「きつい」と感じることもあるでしょう。

現場での人間関係が難しい

建設業の現場では技術者や職人などさまざまな人と関わります。また、高齢化している業界であり、海外からの労働者がいる現場もあります。世代や国籍も異なる従業員と働くにあたり、コミュニケーションが取りづらい場合も多いでしょう。

図面の変更や追加の工事なども多く、関係各所と連携していくことが求められます。その際、年上やベテランの職人たちの気を害すことがあると、業務に支障をきたす恐れがあります。円滑な作業のために気を使わなければならず、働きにくいと感じる場面もあるでしょう。

労働に対して賃金が低い

建設業は早朝出勤や夜勤などもあり不規則で、体に負担がかかる労働時間になることもあります。その上肉体労働で体を酷使することを考えると、収入が見合わないと感じることもあるでしょう。長時間労働のため時間給換算で考えると、賃金に納得できないこともあるはずです。

また、国土交通省の資料によると、建設業は他の産業と比較して低い給与水準です。賃金のピークが体力のピークと重なることもあり、40代後半で賃金のピークに達することも示されています。

経験を積めば指導する立場になり評価されるようになるものの、どれだけ動けるかも重要視されるのが建設業といえます。

引用元:国土交通省 参考資料 Ⅰ.データ編

 

雇用が不安定である

建設業は日給制で社員として採用することが少ない業界でした。しかし、国土交通省の資料によると、現在は建設業就業者数500万人のうち契約社員などの非正規雇用は19%となっています。製造業の27%と比較しても多いわけではありません。

しかし、今でも日給制の文化は残っており、現場で直接作業を行う技能労働者において、6割以上が日給制です。日給制は、天候で作業が中止になると収入が下がるなど、収入が一定ではありません。収入が不安定だと長期的に働くことに不安を覚える若年層は多いでしょう。

参考:国土交通省 建設業の働き方として目指していくべき方向性

建設業で人材が定着するのに必要な要素

厚生労働省の資料より「今後建設業で働き続けるために必要だと思う労働環境」について、以下の理由が上位となっています。

  • 週休2日制の推進
  • 仕事の内容に対応した賃金
  • 職場の人間関係をよくする
  • 仕事を恒常的に確保する
  • 労働時間短縮のための工程の改善

参考:厚生労働省 建設労働者を取り巻く状況について

上記より、離職率が低い企業を目指すために必要な要素は、以下が考えられます。

  • 業務効率化
  • 体系的な教育体制
  • 良好な人間関係

それぞれについて解説します。

業務効率化

「週休2日制の推進」「仕事の内容に対応した賃金」「労働時間短縮のための工程の改善」について対処するには、業務効率化を図ることが大切です。

建設業では週休1日が多いのが実情ですが、国は2024年より週休2日制の導入を推進しています。工期設定の見直しをする必要があり、週休2日制の実現にあたって業務効率化が不可欠です。

業務効率化を図る方法としては、システムの導入や社外サービスの利用が考えられます。手作業で行っている業務をデータ管理に移行し、業務の一部を外部に委託すれば、作業負担が軽減できます。それによって現場に余裕が生まれ、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。また、マニュアル化できない現場での判断などを若手に伝えていく時間確保も目指せます。

体系的な教育体制

恒常的に仕事を確保するためには、組織の技術力を高め、安定的な受注を確保する必要があります。外部機関との連携も視野に入れて研修制度に力を入れるなど、教育制度を整えることが有効です。

建設業の教育は、実際の仕事を通じて指導し、知識や技術を身に付けるOJTであることがほとんどです。しかし、人手不足の現場ではその機会が不十分なことがあります。教育体制を見直し必要な技術承継ができれば、組織全体のスキル向上を目指せます。将来のリーダー候補の層が厚くなり組織力も強まるでしょう。

良好な人間関係

良好な人間関係を築くことで、離職に至るような人間関係のトラブルを防げます。良好な関係を築くにはコミュニケーションを図る場を設けることが大切です。「職場の人間関係をよくする」ための具体的な対応策としては、定期的な面談の実施が考えられます。

人員的、時間的余裕がない現場では、一人ひとりと向き合う時間はなかなか取れません。話を聞いてもらいながら発言できる機会を作ることで、慣れない職場でも不安感を軽減できるでしょう。

上司は、経験やスキルに乏しい若い従業員が、職場で成長していけるようサポートすることが求められます。上司や同僚への不満や職場の雰囲気などが離職理由になることを意識し、普段から声を掛け合える組織が理想です。

まとめ:離職率が高い原因を理解し採用難を改善しよう

離職率の改善には原因を理解することが重要です。高卒者の入植者数は多いものの離職率は平均より高い傾向です。

建設業では高齢化が進み、技術継承ができないという課題があるため、若手従業員の採用と人材の定着化を図り、離職率を下げる取り組みが急務です。

作業負担の軽減、スキルアップのためのサポート、面談を実施することによる精神的なサポートなどにより、風通しがよく安定的な経営を目指すのがよいでしょう。

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