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自社の離職率は高い?建設業における現状と対応策を確認

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建設業に関わる会社では、採用してもすぐ辞めてしまう人が多く、高い離職率に悩んでいる経営者や採用担当者もいるでしょう。また、離職率の平均と比較して自社の離職率が高いのかどうか、その基準が気になるという方もいるかもしれません。

建設業では人材不足の課題解消が急務です。課題を解消するために、まずは現状を把握しておきましょう。

この記事では、建設業における離職率の現状を解説します。また、対応策も紹介しますので、高い離職率に悩まれている方は参考にしてください。

自社の離職率は高い?建設業の現状を確認

建設業の離職率に関連するデータを紹介します。業界の基準値になりますので、自社の離職率が高いのかどうかの比較材料にしてください。

ここで紹介する項目は以下の4つです。

  1. 他産業と比較した建設業の離職率
  2. 高卒者と大卒者の離職率
  3. ゼネコンの離職率
  4. 建設業で不足している職種

以下で1つずつ解説します。

1.他業界と比較した建設業の離職率

厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、2021年の建設業の入職者は273.3千人、離職者は260.5千人でした。入職者が離職者を上回っているため、この数値だけを見ると問題ないように見えるかもしれません。

ここで、建設業就業者の高齢化の状況について確認してみましょう。厚生労働省の資料によると、一律に定年制を定めている企業数割合は97.6%。定年を「65歳以上」とする企業数割合は、建設業が最も高くなっています。

引用元:厚生労働省 定年制等

定年延長に積極的な企業も多くありますが、その理由は人材が不足しているためです。人材不足が進む建設業では、ベテランが退職するとますます深刻な状況に陥ってしまうため、シニア雇用に積極的に取り組んでいます。

厚生労働省の離職率のデータを確認すると、全産業では13.9%であるのに対し、建設業は9.3%。建設業の離職率は全産業の平均離職率よりは低く、決して高いわけではありません。しかし、これは高齢化による影響が考えられ、楽観視できるものではないと言えるでしょう。


引用元:厚生労働省 令和3年雇用動向調査結果の概況

2.高卒者と大卒者の離職率

次に、高卒者と大卒者による離職率の違いを見てみます。厚生労働省の資料によると、2019(平成31)年のデータでは以下の数値となっています。就職後3年以内において、大卒者の離職率と比べて高卒者の離職率が大幅に高いことがわかります。

  • 建設業における高卒者の離職率42.2%(全産業の平均は35.9%)
  • 建設業における大卒者の離職率28.6%(全産業の平均は31.5%)

高卒者の離職率は全産業の平均と比較しても高いことが示されており、若手の離職率が高いことに悩む事業者は多いのではないでしょうか。

「新規高卒就職者の産業分類別就職後3年以内の離職率の推移」

※令和2年3月卒については就職後2年以内、令和3年3月卒については就職後1年以内の離職率

引用元:新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況 高校

「新規大卒就職者の産業分類別就職後3年以内の離職率の推移」

※令和2年3月卒については就職後2年以内、令和3年3月卒については就職後1年以内の離職率

引用元:新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況 大学

参考:厚生労働省 学歴別就職後3年以内離職率の推移

3.ゼネコンの離職率

総合建設業者を指すゼネコンは、営業・設計・施工の3つの職種の人材が所属し、企画から施工まで一貫して行います。ゼネコンの新卒採用の学歴は、ほとんどが大卒以上です。

建設業の中でもゼネコンは離職率が低いと言われています。日刊建設工業新聞社の調査によると、新卒社員の3年以内の離職率は以下の通り改善しています。

  • 2013年度:10%以上20%未満が4割
  • 2015年度:10%未満が全体の4割

また、売上高が1兆円を超えるスーパーゼネコン(大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店)の新卒離職率は5%以内で、ゼネコンの中でも離職率が低くなっています。

離職率が改善した主要のゼネコンは、フォロー体制の構築や働き方改革を実施しています。具体的には、新入社員研修やフォローアップ研修などで交流の機会を増やしたり、作業ロボットやシステムの導入で労働時間を削減する取り組みを行ったりしています。これらの取り組みにより、良好な人間関係の構築と残業時間の削減などが実現し、離職率が低下しているものと考えられます。

4.建設業で不足している職種

建設業には施工管理、営業、事務管理などの職種がありますが、中でも現場で作業を行う職人などの専門職や技能工が不足しています。

厚生労働省の資料によると、労働力の不足度合いが高いのは「専門・技術」や「技能工」です。国土交通省の資料では、建設業就業者の推移において、就業者の6割以上を占める「技能労働者」の減少が大きいことが示されています。

引用元:厚生労働省 建設労働者を取り巻く環境について

引用元:国土交通省 最近の建設産業と技能労働者をめぐる状況について

 

また、全国のハローワークの求職者数と求人数をもとに算出される有効求人倍率では、「建設躯体工事の職業」が全ての職業の中で最も高く、パートを含むと10.11倍、パートを除くと10.68倍となっています。建設躯体工事の職業は、建設工事でとび、鉄筋組み立てなどを担う職業を言います。

全業種の有効求人倍率の平均はパートを含むと1.22倍で、建設・採掘の職業は5.16倍、パートを除くと平均は1.24倍、建設・採掘の職業は5.66倍です。有効求人倍率が高いのは人手不足の状態です。

参考:厚生労働省:参考統計表

離職率が高いことが引き起こす建設業における深刻な問題

前項の内容により、中小企業における若手の現場作業員の労働力が不足していることがわかります。若年層の離職率の改善に向けて対策が必要です。

また、もし前項で紹介した離職率のデータと比較して自社の離職率が抑えられていたとしても、「離職者が多い」「人手不足だ」と感じているなら早急な対策をおすすめします。

採用しても人材が定着しない状況が続くと、既存従業員の業務が増え、離職の連鎖が引き起こる可能性があります。建設業では、従業員の高齢化により技術承継できないことが深刻な問題となっています。

建設業には、技術は現場で見て学ぶものだという文化があります。実際、現場での判断などは経験に基づくもので、マニュアル化できないことが多くあります。技術承継を考慮し、高い離職率を下げる取り組みは、早急に着手することが求められます。

建設業の高い離職率への対応策

高い離職率を下げるには、以下のような方法が考えられます。

  • 教育制度を整える
  • 福利厚生を整える
  • 休暇取得の推進

安全面・品質面でのスキルアップを図り、ノウハウの共有などのために教育制度を整えるなど、人材育成に時間をかけることによって生産性の向上が期待できます。

離職率を改善させたゼネコンの取り組みでも紹介しましたが、社内で交流が増えることは離職率を下げることにつながります。

また、福利厚生を整えると従業員の満足度が向上し、求職者へのアピールにもなります。福利厚生とは企業が従業員と家族の健康や生活向上を目的に提供するもので、住宅手当、通勤手当、資格取得手当、特別休暇などが含まれます。働きやすい環境や待遇を提供できれば、採用の応募者数も増えるでしょう。

さらに、工期が終わった段階で休日返上で働いた分の休暇を取得できるようにする、工期にゆとりを持たせられるよう工夫するなど、従業員に負担のない労働環境作りも必要です。

すぐできる!建設業で高い離職率状況を補う方法

高い離職率への対応策をいくつか紹介しましたが、新しい制度や労働環境の変化が定着するには一定の期間を要するため、簡単にできるわけではありません。ここでは、今すぐにでも人手不足の状況を解消したいという場合のために、高い離職率の状況を補える方法を紹介します。

社外サービスを利用する

すぐにできる対策としておすすめなのは、業務の一部をアウトソーシングして従業員の業務負荷を軽減することです。業務を効率化でき人材不足をカバーすることが可能です。結果的に離職率が低下する可能性があります。

建設業で利用できる社外サービスとして以下が挙げられます。

  • 現調代行
  • 図面作成代行
  • 金属加工代行

現調代行

建設業では、建築や改修工事において現地調査(現調)が欠かせません。工事進行に影響を与えるため正確な情報が必要で、人件費や時間などのコストがかかります。代行サービスを利用することで、現調の効率化を図れます。

図面作成代行

建設業では、携わっている工事ごとに図面があり、1つの現場でも多くの図面を必要とします。図面作成代行を利用することにより、その分現場作業やスケジュール管理などの業務に集中できます。専門業者が作るため誰もが確認しやすい図面に仕上がり、生産性の向上にもつながります。

金属加工代行

自社で金属加工を行う場合もあるでしょう。手動工具による加工は品質が安定せず耐久性の低下を招く可能性があります。また、作業中の怪我や亜鉛中毒の恐れもゼロではありません。金属加工代行を利用すれば、これらのデメリットが解消されます。

システムの導入と比較した際の社外サービス利用のメリット

作業負担を軽減し業務を効率化する方法として、システム導入も方法もあります。しかし、社外サービスはシステムの導入と比較し、以下のようなメリットがあります。

  • 社内において運用ルールの変更などが不要
  • 品質の安定化・精度向上が期待できる

ツールやシステムを導入すると、図面や工程表などの各種資料をデータ化し一元管理できます。情報の最新版への差替え・共有が容易になり、人為的ミスを防ぐことなどが可能です。

しかし、ツールの導入初期には、使い方のレクチャーや運用ルールの決定など運用の定着化に向けた取り組みが必要です。一方社外サービスの利用であれば、依頼内容をサービス会社へ伝えて納品を待つのみです。社内で運用ルールが変わることはほとんどありません。

また、現調や図面作成、金属加工といった、それぞれの分野の専門企業へ依頼することにより、品質が安定し精度も向上することが期待できます。それによって社外からの信頼も高まり新規案件の獲得につながる可能性もあるでしょう。

まとめ:高い離職率を下げて人材が定着する組織づくりを目指そう

建設業では、人材不足が深刻化し高齢化が進んでいます。技術承継ができないという大きな問題に直面しており、若手の人材を積極的に採用し定着する組織づくりが求められます。

週休2日制の導入を推進するなど、国としても対策を進めていますが、それぞれの企業においても高い離職率を下げるための対応が不可欠です。

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