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働き方改革

建設業の社員の離職率を下げる5つの対策|現況や離職防止の重要性を紹介

離職率とは、一定の期間に仕事を辞めた社員の割合を表します。企業の経営を安定して行うためには、離職率を下げる対策に努めることが重要です。

少子高齢化によって労働人口が減少しているため、新しい人材の採用は難しくなっていることに加えて、団塊の世代の大量離脱が生じる建設業では、入社した社員の離職はさらなる痛手となります

そこで本記事では、建設業で離職率を下げる8つの対策を紹介します。離職の現況や離職防止の重要性を把握した上、それぞれの企業に適切な対策を実施しましょう。

離職の現況

ここでは、離職の現況について、次の2点を解説します。

  • すべての業界で就職後3年以内の離職者は3割を超える
  • 建設業の新卒就業者における3年以内の離職率も高い

すべての業界で就職後3年以内の離職者は3割を超える

国内の離職で特に目立つのは、就職後3年以内の離職率の高さです。厚生労働省による令和4年の新規学卒就職者の離職状況の公表では、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が35.9%、新規大学卒就職者が31.5%となりました。

参考:新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)|厚生労働省

業務に対しての就職前のイメージと就職後のギャップ、または給与、休日、残業などの待遇・福利厚生に対しての不満、この先のキャリア形成が望めないことが主な理由に挙げられます。

高齢化が進む日本では、若い労働者を採用するのが難しい上、採用できたとしても離職してしまう可能性があります。まずは新規採用者を対象とした離職防止対策を行うことによって、離職率を下げることが重要だといえます。

建設業の新卒就業者における3年以内の離職率も高い

建設業の新卒就業者における3年以内の離職率も、産業全体の平均と同様に高い傾向になりました。

令和4年に集計した建設業における新規高卒就職者の離職率は、42.2%と産業全体の平均よりも高い結果で、新規大学卒業就職者では28.8%と平均より低いものの、3割程度が3年以内に離職していました。

参考:新規高卒者の事業所規模別・産業別離職状況
参考:新規大学卒業就職者の事業所規模別・産業別離職状況

週休2日制が推進されているものの、ゼネコンの施工管理業務は激務であること、中小企業においては労働量の割に薄給であることが原因です。2022年の1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与が443万円であるのに対して、建設・土木作業員の平均給与はおよそ417.1万円と平均よりも低い結果となりました。

参考:建設・土木作業員 - 職業詳細 | job tag
参考:令和4年賃金構造基本統計調査

厳しい労働環境といったイメージがあり、採用自体が難しい建設業では、採用後のサポートを強化することによって離職者を減らす必要があります。

離職率を下げる重要性4つ

離職率を下げることによって、企業にどのような影響があるのでしょうか。この項目では、離職率を下げる重要性について4つ挙げて解説します。

  1. 企業イメージの向上につながる
  2. 優秀な人材の流出を防げる
  3. 既存社員の業務負担を軽減できる
  4. 採用・教育のコストカットにつながる

1.企業イメージの向上につながる

離職率を下げることによって、企業イメージの向上につながります。離職率が低い企業は、恵まれた給与など社員が継続して働く条件が整っている傾向があります。加えて、堅実な経営による安定した雇用、残業や休日出勤が少ない整備された労働環境、充実した福利厚生など、離職率の低い企業にはさまざまな要因が伺えます。

例えば、電気やガス、熱供給、水道などの離職率が低いといわれるインフラ業界の平均給与は、765万6,000円と業種平均の443万3,000円よりも300万円以上高い結果となりました。

参考:令和3年分民間給与実態統計調査結果について|国税庁

近年では、Web上の口コミサイトやSNSで情報が広がりやすくなりました。企業にとって良い情報はもちろん、不利益な情報も拡散される可能性があります。離職率が高いという情報は、企業イメージの低下につながりかねません。そのため、離職率の低下に努めることが重要です。

2.優秀な人材の流出を防げる

離職率を下げる対策を実施することによって、結果的に優秀な人材の流出を防げるでしょう。前述したように離職率の低い企業には、高給、安定した雇用など、働きやすい条件が整っています。人材の定着を促す対策を行うことによって他企業よりも質の高い労働環境が整備できれば、優秀な人材が離職する可能性を減らせます。

反対に残業や休日出勤が多く、成長をサポートする制度が整備されていない企業は、優秀な人材が流出する可能性が高いといえます。キャリア採用を実施する企業も少なくないためです。即戦力となる優秀な人材ほど、転職を検討するでしょう。

優秀な人材の流出によって、サービス品質の低下や、事業の弱体化を招きかねません。離職率を下げることが企業全体の成長にもつながるでしょう。

3.既存社員の業務負担を軽減できる

離職率を下げることによって、既存社員の業務負担を軽減できます。通常、離職者が対応していた業務は既存社員が引き継ぎますが、離職者が増えなければ引き継ぎせずに済み、それぞれの業務負担も増えません。

業務負担が増えるとモチベーションが低下する上、その不満から新たに離職を検討する社員が生まれるリスクもあります。離職者が離職者を生むという連鎖が続くと、経営に影響を与えかねないため、早めの対処が必要です。

4.採用・教育のコストカットにつながる

離職者の代わりとなる新たな人材の採用・教育のコストカットにつながります。離職者が出なければ、求人広告への出稿料や研修費用などがかからないためです。特に、求人広告の掲載料は安くても数万から数十万、プランによっては、100万円以上する場合があります。

既存社員の業務負担の軽減、業務の円滑な進行のために、新たな人材の確保が急務となります。離職者が続けば大きな負担となるでしょう。経費削減のためにも離職率を下げる対策を促進しましょう。

建設業社員における離職の原因3つ

厚生労働省の調査報告書によると、若年技能労働者があまり定着していない理由として、「作業が身体的にきつい」「若年技能労働者の職業意識が低い」「年齢の近い先輩が少ない」といった理由がそれぞれ42.0%、32.4%、29.9%と大きな割合を占めました。

また、設備工事業では「入職者のイメージと実際の業務のギャップ」が3割を上回り他の業種より高い結果となりました。

参考:「建設業における雇用管理現状把握実態調査報告書」|厚生労働省

このデータをもとに、建設業における若手社員の離職の主な原因は、次の3つが考えられます。

  1. 厳しい労働環境
  2. 人間関係のストレス
  3. イメージと実務とのギャップ

それぞれ解説します。

1.厳しい労働環境

建設業社員における離職の原因の1つは、厳しい労働環境だといえます。足場や鉄筋、コンクリート工事などを専門にする鳶工事や電気設備工事、配管工事、消防設備工事など、建設現場の作業はさまざまですが、総じて体力が必要です。

施工管理者の場合、現場技術者の指揮監督から、工事スケジュールの調整や予算管理、現場の安全衛生管理など、工事全体の管理業務を担います。さらに、日報の作成や公共機関への書類手続き、設計者やクライアントとの打ち合わせも生じるなど、業務負担が課題とされています。

工事は天気に左右されることもあり、納期に間に合わせるために長時間労働が生じたり、場合によっては休日出勤したりすることもあります。こうした厳しい労働環境の改善、または厳しい業務に見合った対価を支払うことが離職率を下げるために重要です。

2.人間関係のストレス

人間関係でのストレスが原因で離職する若手社員も少なくありません。「年齢が近い先輩が少ない」という離職理由は、「相談相手となる社員がいない」と言い換えることもできます。2016年における建設業就業者の年齢階層別構成比では、55歳以上の割合が33.9%、男性生産労働者の平均年齢は44.2歳となっており、全産業や製造業に比べ、高齢化が進行していることがわかります。

参考:建設業就業者の年齢構成 - 厚生労働省|厚生労働省

また、「若年技能労働者の職業意識が低い」といった離職理由を挙げる社員がいることから、若年技術労働者と企業側、あるいは先輩社員との意思疎通が上手く行えていない可能性もあるでしょう。

高齢化が進む中、若手社員を中心に企業を構成するのは難しいため、年齢の離れた社員同士が意思疎通を図るための対策が求められます。

3.イメージと実務とのギャップ

設備工事業では、入職前のイメージと実務とのギャップが原因で離職する社員もいます。

例えば、超高層ビルなど大規模な建設・土木工事を行う会社に入社した新卒社員の場合、地図に残るような仕事に携われる、大企業のノウハウを吸収できるとイメージしていたものの、実際働いてみると残業時間が長い上、平日代休の休みでも電話がかかってくるなど、想定外の業務負担にギャップを感じるでしょう。

それに加えて、多職種の人と連携を取りながら業務を進めるため、コミュニケーション力が必要なことにギャップを感じる人も少なくありません。専門性の高い建設業務の認知拡大や、採用前の事前理解に努めることも大事です。

建設業の離職率を下げる5つの対策

ここでは、離職率を下げる5つの対策を解説します。

  1. メンター制度を導入する
  2. 柔軟な労働環境を構築する
  3. 福利厚生を手厚くする
  4. 適切な評価制度を設ける
  5. 職位・スキル別で研修を実施する

1.メンター制度を導入する

社員のコミュニケーションを図るためにメンター制度を導入しましょう。メンター制度とは、会社や配属部署に所属する上司とは別に、相談役となる先輩が若手社員をサポートする制度です。若手社員の人間関係のストレスや仕事に対する悩みなどの解決をサポートし、会社内で孤立するのを防げます。

相談役を担うメンターは、会社内部の別の部署の先輩社員のほか、外部機関に依頼してメンターを導入することもできます。メンター制度を導入して、悩んでいる社員を事前に把握し、離職防止に努めるのも1つの手段です。

2.柔軟な労働環境を構築する

柔軟な労働環境を構築して、社員の業務負担の軽減、または身体的にきついイメージを一新しましょう。

近年では働き方の多様化が進み、業界によってはテレワークやフレックスタイム制度など、育児や介護をしながら柔軟に働ける体制の構築が進みました。とはいえ、天候にも左右され、なおかつ短納期が求められることもある建設業で同制度を導入するのは難しいでしょう。まずは、週休2日制などを採用することによって、ワークライフバランスを整えやすくするのも1つの方法です。

それに加えて、業務効率化ツールを活用するといいでしょう。たとえば、ICT建機やドローン、BIM・CIMなどのデジタル機器や勤怠管理ツール、プロジェクトの原価管理、製造管理ツールの導入によって、業務負担が軽減できます。

こうした取り組みによって、業務負担の軽減や労働時間の削減ができ、結果として建設業のきついイメージを払拭するきっかけにもなるでしょう。

3.福利厚生を手厚くする

福利厚生を手厚くすることによって離職者を減らしましょう。社会保険への加入はもちろん、食費補助や住宅補助、資格取得の支援、レジャー施設、宿泊施設の利用補助など、給与以外を手厚くすることによって社員のモチベーションは向上します。

離職率が低いことで知られる鹿島建設は、社宅や独身寮を備えるほか、本社内の健康管理センターやリゾート施設、保養所、スポーツ施設などを使用できます。それに加えて、持株会、住宅融資など、充実した福利厚生制度を導入しています。

参考:募集要項|採用情報|新卒採用情報|鹿島建設株式会社
参考:人事データ | サステナビリティデータ | サステナビリティ | 鹿島建設株式会社

賃上げするのが難しい場合は、福利厚生で社員の満足度向上を図るのも有効な対策です。自社社員の要望を調査した上、ニーズに合った制度を導入しましょう。

4.適切な評価制度を設ける

適切な評価制度を設けることも離職率を下げるのに有効です。成果やスキルの適切な評価が、昇格や降格、役職、等級、報酬に影響すれば社員のモチベーションは向上する上、競争力も高まります。年功序列制に変わる評価制度として注目される成果主義では、仕事の成果やスキルだけでなく、成果に至るまでのプロセスを評価し、報酬や人事に反映します。年齢や社歴、経験などを重視する従来の年功序列制とは異なり、若手にもチャンスがある一方、社歴の長い社員でも成果を出せなければ評価されません。

成果主義を採用する場合は、成果やスキルを正確に判断するシステムやプロセスを構築して公平に評価する必要があります。社員のモチベーションを維持することによって、離職率の低下につながるでしょう。

5.職位・スキル別で研修を実施する

若手社員や中堅社員、ベテラン社員、あるいは職位によって研修を実施することが離職率を下げる対策となります。

研修によって若手社員は自分の成長を感じ、モチベーションを高められます。中堅社員は若手社員の育成方法やリーダーシップ、ベテラン社員は学んできた知識や技術を再確認した上、体系的に整理できます。新たな視点や知識を身に付け、企業を発展させるアイデアのきっかけとなる可能性もあるでしょう。

管理職向けの研修ではマネジメントスキルも学べるため、若手社員とのコミュニケーションの取り方がわからない場合にも有効です。自社研修以外に離職防止に役立つ外部サービスを利用し、新しい知識を身につけるのもいいでしょう。

原因を把握して離職率を下げる適切な対策を実施しよう

新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率はおよそ3割を占めます。まずは若手社員の離職率を下げることが企業の安定経営につながるでしょう。自社の労働環境や社員の年齢構成などを再確認した上、課題に合った対策を行うことが重要です。ぜひ5つの対策を参考にしてみてください。

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