配管ジャーナルPiping Journal

省人・省施工ソリューション

継手溶接は中毒リスクに注意すべき

溶接継手 亜鉛除去 金属加工

溶接継手はパイプのつなぎ合わせに溶接して使用する部材です。溶接することで強度や信頼性が高いため多くの配管工事で使用されますが、施工前処理が必要で、その際に起こる化学反応によるリスクが伴います。 この記事では、溶接継手の接合部処理のリスクと回避方法について詳しく説明します。

溶接継手は使用前に準備が必要

溶接継手は、パイプとつなぎ合わせるために溶接をして使用する部材です。接合部を溶接するため、ねじ込み式よりも強度が高く、信頼性の高い配管接合ができます。

溶接継手の特徴

溶接継手は、溶接によって接合部の強度が高くなるのが最大の特徴です。そのため、大量の液体供給、排水が必要とされる集合住宅、ホテルなどの住空間を始め、発電、ガス、石油化学のようなプラント、水処理施設などで使用されています。

溶接継手の種類

様々な種類の溶接継手があり、配管仕様や流体条件などに合わせ、形状・材質・材質などを選定していきます。溶接継手の形状には、エルボ、ソケット、キャップ、チーズ、レジューサーなど様々なものがあります。材質は黒溶接継手、白溶接継手(メッキ加工品)、ステンレス製などがあります。

蒸気配管などに使用されることの多い黒ナシ管や黒溶接継手には、メッキ処理が施されていませんが、消火配管や冷温水配管を始めとする白ナシ配管や白溶接継手には、腐食防止のための亜鉛メッキ処理が施されています

亜鉛メッキ防食加工された溶接継手は使用前の準備が必要

溶接継手の開先部に亜鉛メッキ防食加工されている場合は、施工前の準備が必要です。ディスク・グラインダーまたはグリット・ブラストのようなツールで溶接部の亜鉛を除去します。ディスク・グラインダーを使用する場合、除去作業中に火花が生じてきたら亜鉛が除去されたと判定できます。

亜鉛除去をするべき理由と対応

溶接継手の開先部に施される亜鉛メッキの長所として、耐久性が挙げられます。亜鉛メッキの表面に緻密な酸化皮膜が生成されます。この緻密な皮膜が強力な保護皮膜となって、腐食が進行しにくくなります。一方で、亜鉛には生体への影響があるため、扱いには注意が必要です。

亜鉛による中毒

亜鉛の毒性は極めて低いですが、摂取量により人体に影響を及ぼす場合があります。ここでは、配管工事の現場で起きやすい吸入中毒について説明します。

亜鉛メッキ鋼材が使用された継手の溶接時に、亜鉛の融解と蒸発が起こります。これを酸化亜鉛ヒュームと呼びます。酸化亜鉛ヒュームを吸入すると、発熱症状を招く場合があります。吸入後2~8時間後に表れることが多く、亜鉛熱、真鍮熱、金属熱などと呼ばれています。インフルエンザに罹患したときのような悪寒を伴いますが、多くの場合、数時間経てば回復します。

労働安全衛生法では、鉛中毒予防規則が定められています。メッキ工場等表面処理工場などでは、水質汚濁防止法などの法律により亜鉛の排出量などを規制しています。

亜鉛除去時の対応

亜鉛が蒸発すると酸化亜鉛の白煙が立ち上るため、作業者が吸入しないよう配慮します。亜鉛メッキ鋼材を溶接する場合は、溶接部分の亜鉛を除去した後に溶接するのが一般的です。

亜鉛メッキ加工された既設の部材にあとから溶接する場合のように、制約があって亜鉛の除去が困難な場合には、付着している亜鉛が完全に蒸発する溶接条件を選びます。この場合も、白煙の吸引防止策が必要です。

亜鉛除去作業に伴う3つのリスク

亜鉛の融解には生体への影響があるため、溶接前の亜鉛除去は必須です。しかし、溶接前の亜鉛除去にはさまざまなリスクがあります。

亜鉛の残存の可能性

亜鉛は融点420℃、沸点906℃です。通常は融解、蒸発し、鋼材溶接部に残留することはほぼありません。しかし溶融金属の温度降下が早い場合、気化した亜鉛が溶接部から抜け切らず、ブローホールと呼ばれる気孔として取り残される可能性があります。

なお、亜鉛メッキ皮膜が残存している状態で溶接接合をすると、亜鉛が鋼中に拡散し、接合力を低下させてしまいます。身体のためにも、溶接継手の接合力の面でも、十分に亜鉛除去をすることが重要です。

亜鉛除去による被膜破損

溶接によって継手開先部の切断や接合をすると、溶接部はもちろん、熱影響を受けた部分のメッキ皮膜も破損することになります。亜鉛除去時に過酷な曲げ加工を行ったり、鋭利なもので強い衝撃を加えたりした場合、メッキ皮膜に亀裂や浮き上りなどが生じ、剥離する可能性もあります。

亜鉛除去作業のリスクと非効率性

溶接継手の亜鉛除去作業は回転工具を使用するため、除去作業には危険が伴います。また、現場での亜鉛除去作業には100A1個につき10分ほどかかると言われており、多くの手間と時間がかかります。除去作業に時間と工数を取られてしまい、設置・取り付け作業が進まないなど工程の進捗に問題が生じることがあります。

まとめ:溶接継手はリスクを回避した部材・サービスを選ぼう

溶接継手を使用する場合は施工前の亜鉛除去が重要です。しかし、現場での除去は人体への影響や非効率性も高いという問題があります。

それらを軽減するための手段として、メッキ加工される前に溶接部分に耐熱塗料などを塗布した不メッキとした製品を選ぶ、リスクを伴う亜鉛除去作業を代行してくれるサービスの利用が挙げられます。溶接継手の納品や、亜鉛除去サービスは、コスト面や仕上がりなどについて、信頼のおける業者を選びましょう。

業界ひとすじのプロ集団である三興バルブ継手株式会社では、「配管設備資材の販売・納品」だけでなく、改修工事現場を中心とした「3Dスキャナによる図面作成」や、「配管継手加工・ハウジングプレファブ加工」までワンストップでお届けできるサービスを展開しております。幅広い知識を持つ専任の担当者が対応いたしますので、お気軽にお問い合せください。

配管資材専門店VALVIA(バルビア)