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陸上ポンプは用途に合った製品を!トラブル対応もチェック

陸上ポンプ

陸上ポンプは、工場やビル、工事現場をはじめ様々な場所で発生する各種給水・排水・汲み上げ処理を行うのに使われています。どのような用途で使用されるかにより、使用する流体・流量・揚程・設置環境等が変わるため、どういったポンプを選定するのかが大変重要です。

陸上ポンプの種類や特性、トラブルと対応方法を事前におさえておくと、選定もスムーズです。この記事では、陸上ポンプについて詳しく紹介します。

陸上ポンプとは

陸上に設置するポンプのことを「陸上ポンプ」といいます。各種給水・排水や排泥、汲み上げの際に使用します。陸上ポンプの使用の特徴として、運転に先立ち、いわゆる「呼び水」を行い、ポンプと吸込管から空気を抜いて流体を管内に満たす必要があります。

陸上ポンプには、屋内設置用と屋外設置用があります。屋外設置用の陸上ポンプには雨水などが直接かかるため、防水対策されたモーター・ポンプを使用しています。屋内での使用でも、水気や湿気などが懸念される場合は、屋外設置用陸上ポンプを使用するとよいでしょう。

なお、陸上ポンプには自吸式ポンプと非自吸式ポンプの2種類があります。

自吸式ポンプ

自吸式ポンプはフート弁、サクションユニット等が不要で、最初に呼び水を行えば次回からは自動的に空気を排出して水を吸い上げるため、何度も呼び水作業を行わなくて良いことがメリットです。

非自吸式ポンプ

非自吸式ポンプはフート弁と呼ばれる弁を取り付け、呼び水を必要とするのが特徴です。フート弁を取り付けると、吸込配管とポンプに水が満水になり、ポンプが動くとすぐに吸水と送水が可能になります。

自吸式・非自吸式ポンプはそれぞれ、ステンレス製や鋳鉄製、樹脂製など材質にも種類があります。腐食や早期摩耗を回避するため、移送する液体に適した材質を選択する必要があります。 また自吸式・非自吸式ともに、時間が経過するにつれ管内の水も徐々に落水していきますので、場合によっては使用時に再度呼び水をする必要が生じる場合があります。

陸上ポンプの自吸の原理

自吸式ポンプの自吸は、次のような仕組みで行われます。ポンプ内に注水され始動すると、羽根車内の水は遠心力により飛ばされ、吐出側に移動し、羽根車内部は空気だけの状態になります。

吐出側に移動した水の一部を羽根車、あるいはボリュートに戻し、羽根車内の空気と混合させ、空気を気泡状にしてポンプ内の水の流れにのせて吐出側に運びます。

この作業を連続的に繰り返すことにより、吸込管内の空気は徐々に排出され、吸込管内は順次大気圧より低い圧力になります。

吸水面には大気圧が作用しているので、水はこの圧力差により吸水管内に流れ、吸水管内の水面は徐々に上昇しポンプまで達します。このような一連の作動で自吸が行われます。

陸上ポンプの選定ポイント

陸上ポンプを選定する上でのポイントは以下の通りです。

  • 送り出したい液体の種類は何か
  • どのくらいの流量(吐出し量)が必要か
  • どのくらいの揚程が必要か
  • どういった使い方をするのか
  • 設置環境はどういった状況か(屋内・屋外、温度、湿度など)
  • 電気の使用量はどの程度に設定したいか

「吐出し量」とはポンプから吐き出される単位時間あたりの液体の量をいいます。「揚程(ようてい)」とは、ポンプによって液体が得たエネルギーを高さで表したものです。ポンプの吸込口と吐出口の揚程の差のことを「実揚程」といいます。

ポンプは配管や逆止弁の摩擦などで水の勢いが阻害されます。この抵抗による圧力損出分を「損失水頭」といいます。この2つを足した数値が「全揚程」となります。

導き出した「全揚程」「吐出し量」の数値を用いて、グラフ化します。縦軸に全揚程(m)、横軸に吐出し量(m3/min)で書いたグラフを全揚程曲線といい、全揚程曲線で効率のよい場所が書かれた図を「選定図」といいます。

選定図をみることで、どのポンプが欲しいスペックに合っているのかを調べることができます。正しいポンプを選ぶためには、選定ポイントを把握・確認し、全揚程曲線と選定図を作成することが大切です。

トラブルとエラー対応方法

陸上ポンプの主なトラブルの種類と対応方法を説明します。

回転するが水がでない、規定吐出し量がでない

主な原因として、呼び水されていない、空気を吸い込んでいることが挙げられます。呼び水されていない場合は、呼び水をします。空気を吸い込んでいる場合は吸込配管、軸封部の点検・修理が必要となります。

ポンプが振動する、運転音が大きい

軸受が損傷していることが主な原因です。軸受を交換します。

軸封部からの水漏れが多い

グランドパッキン、メカニカルシールの損傷が主な原因です。調整または交換します。

長期運転休止時と保管

長期にわたり運転を休止する際は、不具合防止の観点からポンプを時々稼働させ、いつでも使用可能な状態にしておきましょう。

また、長期間(3ヶ月以上)に渡ってポンプを停止する時はポンプが発錆しないよう注意が必要です。寒冷地の場合は凍結防止の為、ポンプ内および管内の水を抜いて保管します。

長期間運転休止し、再稼働させる際には据付時と同様の点検と確認を行います。

まとめ:陸上ポンプの選定は用途・使用環境の確認が必須

陸上ポンプには、自吸式ポンプと非自吸式ポンプの2種類があります。ポンプの選定の際は、どういった液体を扱うかにより、ポンプ自体の材質を選ぶ必要があります。

さらに、吐出し量や全揚程の数値、設置環境などを確認し、具体的な稼働を考えた選定が必要になります。運用においては、陸上ポンプの使用上発生しやすいトラブルを事前にチェックし、対応できるようにしておくことが重要です。

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